三浦市教育研究所 (神奈川県)

課題
  • 授業でICTを有効活用したい
  • 校務でICTを有効活用したい
導入製品・サービス
    • トータルサポート
自治体規模
10校~29校
プロフィール

三浦市教育研究所
神奈川県三浦市城山町6-9

印刷用資料
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取材日
2009年5月

1993年から市内の小中学校へのパソコン導入を進めてきた三浦市。しかし、教職員のパソコン・スキルの問題や機械的なトラブルに現場の先生方が対応できないなど、授業や教務の中で活用していくには様々な障害があったのも事実でした。そこで、2003年からJMCのJETSSを導入。現在は週1回から2回の割合でアドバイザーが各校を訪問し、教務や授業のサポート活動をおこなっています。

情報教育が進む一方、パソコンをどのように授業の中に取り入れていくかは学校の判断に委ねられている現在の状況。三浦市ではアドバイザーを通じて他市の導入事例の情報を収集するなど、積極的な取り組みを続けています。学校がおこなうべきパソコンの教育とは、どのようなものであるべきなのか。その理想像をJMCのアドバイザーと一緒に探していきたいとおっしゃる教育研究所の村松所長と、同山田指導主事にお話しをうかがいました。

パソコンという「異物」を扱うために、専門家が必要

「従来、学校で使われてきたのは、体育用の軟らかいボールであったり、授業に使いやすい教材であったりと、すべて教育を意識したものでした。しかし、パソコンだけは、一般社会で使われているのとまったく同じもの。その意味では、非常に異質な存在なんです。これまで教職員が苦手としてきた分野に対して、専門知識を持った方にサポートしてもらう必要性が出てきた。それが、三浦市教育委員会がJMCのJETSSを導入した理由です」そう語るのは三浦市教育研究所の所長・村松さんです。

三浦市教育研究所所長の村松さん
▲ 三浦市教育研究所所長の村松さん

三浦市では1993年から市内の小中学校にパソコン教室の設置を推進。情報教育にも積極的に取り組んできました。

しかし、教職員のパソコンスキルが決して高いものではなかったことに加え、ソフト、ハードのトラブルも少なくなく、現場の先生方には大きな負担になっていたと言います。

そこで、従来からパソコン教室の保守業務を請け負っていたJMCに2003年から教務や授業のサポートを委託。現在は市内の全小学校に週1回、中学校には週2回のペースで、アドバイザーが訪問しています。

「他の教材などと違い、パソコンは機械を買ってきてソフトを入れればそれで完成、というものではありません。授業の中でどうやって活用していくかを現場の教職員が考えていかなければならないし、機械的なトラブルだって起こります。それを考えると、ある程度まで学校の現状を把握したうえで、定期的にサポートに来てくれる専門家の存在は不可欠になってきていました。アドバイザーに何でも質問できる環境ができたため、職員室にもパソコンを積極的に使っていこう、という雰囲気が生まれました」教育研究所の指導主事、山田さんも、アドバイザーの必要性を語っていただきました。現在では、技術家庭科のほか、理科や国語、数学、音楽などの授業でも、パソコンの活用が進んでいるといいます。

アドバイザーには、他市の導入事例の情報収集にも期待しています。

「小中学校が生徒に対して教えるべきなのは、特定のソフトウェアの使い方ではありません。パソコンはあくまで授業をより豊かなものにするための道具。それなのに、一般社会では“小学生がパワーポイントを使って、こんなにすごいものを作った”などということに感心してしまう。大切なのは、ソフトが使えることではなく、発表の中身なんです」

日本の学校の長い歴史の中で、情報教育はまだ始まったばかり。技術家庭科の中に正式なカリキュラムが組み込まれている中学校に比べ、小学校でのパソコンを活用した授業は、各学校の判断に任されているのが実情です。他市町村ではどのような活用がなされているのか、中々、情報収集が難しいパソコン活用の実態を、様々なルートから調べてくれるのもアドバイザーの大きなメリットであると山田さんは言います。

また新しいソフトの導入に際して、候補となる製品をリストアップしたり、メーカーに連絡をとるのもアドバイザーの役割。日々、教務と授業に忙しい先生方にとっては、力強い味方になっているようです。

▲三浦市教育研究所の山田さん

「私自身は情報教育を担当するようになって、かなりパソコンを勉強したつもりです。しかし、先生がすべてのことをできるようになるというのは現実的ではありません。個人的にはネットワークやデータベースには自分では手を出さない方針。教職員自身はパソコンの操作ができれば良いのであって、自分でLANを構築までする必要はないんです。しかし、従来の学校のシステムの中には、教職員以外の専門家が介在するという概念がなかった。JMCのアドバイザーは、そのすき間を埋めてくれる存在ですね」そう語る村松さん。三浦市では、村松さんの働きかけによって、全教職員にメールアドレスを支給するプロジェクトも推進中。先生方のパソコンへの取り組みも積極化しています。


企業と異なり、学校ではパソコンがすべて、ではない。

「e-JAPANの構想自体はすばらしいものだと考えています。しかし、それをいかにして教育の現場に反映していくか、という部分では、まだまだ学校にはノウハウが足りません。パソコンは、あくまで道具なのですから、その存在が大きくなりすぎていくのは危険です。パソコンを使うことで、より良い授業が生まれるというタネはたくさんある。私たち教育研究所がやっていかなければならないのは、学校に対してきっかけを与え続けること。活用のハードルを下げるためにも、アドバイザーと協力しあっていきたいですね」そう村松さんは語ります。

「学校というのは個人情報のカタマリのようなもの。今後はセキュリティやウイルス対策に対しても十分に配慮していく必要があると考えています。現在、三浦市では教職員が個人のパソコンを持ち込む際には届け出を行うなどの対策はとっていますが、もっとシビアな対応も必要になってくるはず。現在はJMCのアドバイザーも含めて、セキュリティの研究会などもおこなっています」。

▲「個人情報の管理に学校は
もっとシビアにならなくてはならない」と語る村松さん

他市でのパソコンの導入事例やセキュリティ対策に関しても、今後もアドバイザーを通じて情報を提供して欲しい、という山田さん。授業内容の研究や検討も含めて、もっと学校というものの理解が進めば、より良い関係が築けるはず、と期待を寄せてくださっています。

学校は、パソコンを使った合理化がすべて良しとされる企業とは異なります。生徒に対してはインターネットを使った調べ学習を教える一方で、辞書の引き方だって学ばせなければなりません。そこには一般的なSI企業とは質の違うコンサルティングのノウハウも必要。アドバイザーの果たすべき役割は、さらに大きなものになっていきそうです。