東京学芸大学附属竹早中学校 (東京都)

課題
  • 授業でICTを有効活用したい
導入製品・サービス
    • タブレット端末活用支援
自治体規模
9校以下
プロフィール

東京学芸大学附属竹早中学校
〒112-0002 東京都文京区小石川4-2-1
http://www.u-gakugei.ac.jp/~takechu/index

印刷用資料
ダウンロード(PDF:228 KB)
取材日
2017年1月

東京学芸大学附属竹早中学校は、教員育成を目的とした大学の附属校として、教育効果を高めるために、さまざまな手法により授業改善を重ねています。竹早中学校は、生徒一人1台環境を見据えて、平成28年4月から試験的にタブレット端末の活用を開始しました。


班でタブレット端末やチラシを囲んで朝食の献立を話し合い

▲ 家庭科を担当する酒井やよい先生
▲ 家庭科を担当する酒井やよい先生

「100円で作れる朝食を考えてみましょう。社会科で習ったと思いますが、日本の相対的貧困率は約16%であり、これは誰にでも起こり得る問題と言えます」と、授業を始めるのは家庭科の酒井先生。100円というのは、相対的貧困世帯の家計収支から算出した金額だそうです。ほかの教科と横断した授業設計をすることで、一つのテーマの理解を深め、実践的な知識や能力が養えるよう工夫されています。

家庭科の被服室には、タブレット端末が16台設置されているので、各班には2台の端末が行き届きます。生徒は与えられた15分間の中で、検索サイトに「朝食、レシピ、簡単」といったキーワードを入れたり、レシピサイトを使ったりして、朝食の献立や必要な食材を調べていきます。一人あたりの食材費は、スーパーのチラシをもとに金額を算出していきます。生徒は、タブレット端末に表示される献立のイメージや、チラシに記載のある食材の価格を見ながら、班で話し合いを進めていきます。


先生は、アドバイスや注意喚起をして生徒の進捗を管理

▲ タブレット端末やチラシを見て  献立を話し合う生徒
▲ タブレット端末やチラシを見て献立を話し合う生徒

生徒のタブレット端末を使う手付きはスムーズですが、酒井先生が特に教えたわけではないそうです。

生徒からは、「おいしそう。作ってみたい」、「この献立を作るための食材は?100円に収まらないよ」といった声が、教室のあちらこちらから聞こえてきます。しかし、教室に溢れ返っていた声は自然と収まり、生徒は班で決めた朝食の献立の一人分の食材の分量や金額、イラストなどを協力し合ってまとめ始めました。酒井先生は、「コストパフォーマンスの良い食材とは何かを考えながら献立を立てるように」、「残り時間はあと7分。献立を絞るように」など、アドバイスや注意喚起をして生徒を進捗管理します。調べ学習が終わると、生徒はタブレット端末を教室の決められた保管場所に戻します。

この授業では、酒井先生は「タブレット端末の活用場面を絞る」、「調べる内容によって、インターネットやチラシなどの媒体を使い分ける」、「インターネットを使った調べ学習は時間を制限する」といった点を工夫されたそうです。


タブレット端末が授業を変えた

▲ タブレット端末の活用で  学びの質が高まるという酒井先生
▲ タブレット端末の活用で学びの質が高まるという酒井先生

酒井先生は、「授業準備の負担が軽減されたこと」、「授業時間が有効活用できること」について、タブレット端末の導入効果を特に実感されています。今までは、授業で利用する書籍を地域の図書館から借りることがありましたが、簡単な話ではなかったそうです。

「まず、生徒の人数分の本を借りて図書館から学校まで持ち運ばなくてはなりません。そして、生徒への本の配布や回収、回収した本の数の確認を行う必要があります」と、酒井先生は言います。しかし、タブレット端末を使うことで、それらがすべて解決したそうです。そして、酒井先生は、「本の配布や回収は授業時間のロスになってしまいます。今回の授業で言えば、本来なら80分の時間が掛かるところが、タブレット端末を使うことで50分に収まります」と話します。週一回の限られた時間の中で、どのように授業設計すれば効率的に授業を進められるか、学びの質を高められるか、酒井先生は自分の授業を日々見直されているそうです。


タブレット端末の活用は企業サポートがあると安心

▲ タブレット端末が動作しないと、  授業が中断してしまう
▲ タブレット端末が動作しないと、授業が中断してしまう

今ではタブレット端末を授業で活用している酒井先生ですが、導入当初は戸惑いもありました。「生徒がタブレット端末のパスワードを何度も間違えて端末が使えなくなってしまったり、いつの間にか端末のOSがバージョンアップしてしまったりすることがありました。そこで、教育の情報化を支援する株式会社JMCに相談し、タブレット端末の設定方法を見直してもらい、問題を解決してもらいました」と話します。

タブレット端末を授業で利用していると、思わぬところで授業が止まってしまう可能性があるので、企業サポートがあると安心だと考えられているそうです。


いつもの授業で有効と思われる部分にタブレット端末を当てはめてみる

▲ 栄養バランスや食材価格を  話し合う生徒
▲ 栄養バランスや食材価格を話し合う生徒

一方、酒井先生はタブレット端末を特別なものと考えず、授業に役立つ身近なツールとして捉えられています。「タブレット端末を十分に活用できていないという声をお聞きしますが、私は難しく思わず、『いつもの授業で有効と思われる部分にタブレット端末を当てはめてみれば良い』と考えています」と、酒井先生は話します。

竹早中学校では、タブレット端末は授業で気軽に活用できる効果的なツールだという認識が全教科の先生方の間で広まり、タブレット端末の導入をさらに進めることとなりました。酒井先生の言葉は、授業でのタブレット端末の活用を考える上で、大きなヒントとなるのはないでしょうか。