土浦市教育委員会 (茨城県)

課題
  • 授業でICTを有効活用したい
  • 予算の確保に課題がある
導入製品・サービス
    • 教育の情報化コンサルティング
自治体規模
10校~29校
プロフィール

土浦市教育委員会
茨城県土浦市藤沢975番地

印刷用資料
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取材日
2015年3月取材

「確かな学力」を育む教育を目指している茨城県土浦市。児童・生徒の学力向上のために教育の情報化を推進し、平成26年3月に「土浦市教育情報化計画」を策定しました。計画策定の経緯やJMCに委託した理由、その成果について、土浦市教育委員会指導課指導主事の中島氏と学務課係長の矢口氏にお話を伺いました。

ICTの活用を促進するために、現場の実態に即した計画を策定

土浦市教育委員会指導課 指導主事 中島健一郎氏
▲ 土浦市教育委員会指導課
  指導主事 中島健一郎氏

土浦市では、小学校20校、中学校8校のICT機器を段階的に導入。平成25年度時点では、各学校のパソコン教室にパソコンを約40台、教員一人に1台ずつ配置し、電子黒板は小学校9校と中学校1校が独自に導入していました。

「パソコンが得意な先生は授業で使っていましたが、活用が広がっているとは言えない状況でした。教材をデジタル化したり共有したりすることに対して、まだ抵抗を感じる先生方も多くいました」と中島氏。「導入したICT機器を有効活用し、魅力ある授業を実践するためには、学校現場の実態に即した計画を策定することが重要でした」と説明します。


専門企業に委託し、先生方の活用を促進する計画を期待

土浦市教育委員会学務課 係長 矢口裕樹氏
▲ 土浦市教育委員会学務課
  係長 矢口裕樹氏

矢口氏は、教育の情報化の予算を確保するために、目的や期待する成果を明確にした計画を立てて、財政部門に示そうと考えました。

計画策定にあたっては、最初から専門企業に委託することを考えていたと言います。「教育委員会の担当者が計画を立てると、ともすれば単なるICT機器の整備計画になりがちです。教育の情報化に幅広い知見を持ち、ICT活用に詳しい専門企業に依頼して、一緒に考えてもらうのが良いのではと判断しました」。

市役所では当初、外部に委託するための予算を付けることには消極的でした。矢口氏は「教育の情報化に予算を付けるために、計画を作るんです」と言って説得。「国の方針を踏まえ、市の予算や学校現場の実情に合った整備を進めたいと考えました。そのためには、客観的な視点を持った専門企業に支援してもらい、しっかりした計画を策定することが必要だと訴えました」。導入した機器が無駄にならないように、先生方に積極的に活用してもらうための提案を専門企業に期待していました。

教育情報化コーディネータ2級の有資格者を擁するなど、条件に合った数社に依頼。入札の結果、JMCが選ばれました。「JMCには、以前情報担当の先生方を集めて、教育の情報化をテーマに研修会を開いてもらったことがあります。ICT機器の販売を専門としている会社が多い中で、JMCは文部科学省の方針をよく理解しているなど、教育の情報化に関する幅広い知識と実績があります。ICT機器の整備だけではなく、学校現場の実情も把握して、トータルな提案をしてもらえるという安心感がありました」(矢口氏)。


教職員からなる情報教育推進委員会で計画を検討

計画策定のために、情報教育推進委員会が立ち上げられました。メンバーは各小中学校の教務主任や学校事務、中島氏と矢口氏の計14名です。JMCの担当者も加わりました。「情報担当の先生ではなく、学校全体を把握されている先生方に集まっていただきました。会議では話が専門的になりすぎないように注意。教職員全体が理解しやすい情報化計画を目指しました」(中島氏)。

計画策定期間は半年間。中島氏と矢口氏、JMCによる定例会を月1回のペースで開き、情報教育推進委員会による検討会を4回開催し、計画を固めていきました。定例会をもとに、具体案としてのたたき台をJMCが作成。検討会で計画を固めていくという方法です。「先生方は忙しく、すべてを議論する時間はありません。検討会では重要項目だけを議題にして、細かな内容は定例会で決めていきました」(中島氏)。

事前の教員アンケートによって優先順位が明確に

土浦市教育情報化計画
▲ 土浦市教育情報化計画

「JMCに計画策定の道標を示してもらえたのが、良かったですね」と中島氏は言います。「委員会のメンバーだけでは、何から手を付けるべきか迷ったでしょう」。計画を立てる前に、全教職員にアンケートを採ったことが役立ちました。「生の声を分析したおかげで、優先順位が明確になりましたね」(中島氏)。「アンケートにより、地に足の着いた計画を立てることができました」と矢口氏は振り返ります。

専門企業の多角的な視点により、たとえば特別支援教育における情報化の推進など、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた情報化の推進もカバーできました。「一人ひとり学び方の違う児童・生徒にふさわしいICT活用が重要です。教室にあるICTの資産を活用しながら、わかる授業が展開できるよう、先生方が研修することも大切です。JMCの支援により、児童・生徒の実態に応じたICT活用を検証し、普及することも計画に加えることができました」(中島氏)。

活用するICT機器は、最近導入したパソコンや電子黒板だけではありません。「数年前に整備して、あまり使われなくなっていたデジタルカメラやプロジェクターなども含めて、活用の提案をしてもらえたのも良かったですね」(矢口氏)。

ICTを活用した指導法を確立するために調査研究も実施

土浦市ICT効果測定事業 調査研究報告書
▲ 土浦市ICT効果測定事業
  調査研究報告書

「土浦市教育情報化計画」では、各教科の年間指導計画の中でICT活用の場面を明確化すると共に、教員の指導力を高めることを目指しています。そのため、教育委員会では、JMCの支援によって、授業中における子供の発話の調査研究も実施しています。「先生方の発問とともに、どんな場面やタイミングでICT機器を活用すれば、児童・生徒の思考活動を活発化させられるかを明らかにしたいと考えています。指導法を確立して先生方の参考にしてもらえば、ICT活用が広がり、児童・生徒の学力向上につながると期待しています」(中島氏)。

先生方に対する研修も実施しています。「集合研修で講師が単に説明するだけでなく、実際にICT機器を操作していただき、効果があるという実感を持ってもらうことが大切です」と中島氏。「指導主事などがICTを活用している先生の授業を見て、どこが良かったかを具体的に評価することで自信をつけてもらうといった、地道な活動も必要です」。


ねらい通り教職員の意識が向上。他の市町村から問い合わせも

土浦市教育委員会 中島氏 矢口市

「土浦市教育情報化計画」を策定したことで、学校長がこれまで以上に情報化を担う責任者としての意識が高まり、さらに教職員一人ひとりの意識も向上しました。「ICT機器の配置だけでなく、デジタル教科書などのコンテンツの充実や、ICT支援員などの支援体制も明確化したことで、先生方がどう進めれば良いか具体的にイメージできるようになりました。自主的な勉強会を開くなど、ICT活用に積極的な姿勢が見られるようになりましたね」(中島氏)。

土浦市では、「土浦市教育情報化計画」をホームページで公開したり、矢口氏がイベントで講演を行ったりして、積極的に広報しています。そのため県内外の市町村から問い合わせが相次ぎ、視察に訪れる自治体も現れました。「人員も予算も少ない中で、どのように計画を立てて進めたら良いか、多くの担当者は悩んでいます。土浦市が同規模の自治体のモデルとなって、教育の情報化が全国に広まっていくことを期待しています」(矢口氏)。